融資の嘘
銀行にとって望ましい投資家の属性とは?
銀行にとって好ましい属性は、まず「年収と金融資産がある」人です。年収は夫婦合算することも可能で、基本的には一定の世帯年収がある人を好みます。ただし一番大事なのは、「既存の借り入れ状況」です。借り入れには大きく2種類あり、一つは住宅ローン、もう一つは買い進めていくに当たっての借り入れです。後者は2棟目3棟目と増えるごとに全体の借入額も増えていきます。
例えばA銀行の場合、借入限度額は全ての借り入れも含め年収の10倍までであるため、既存で住宅ローンがある場合や、既に1棟目を個人名義で購入して年収の10倍以上の総借り入れがある人はこの銀行を使えません。また同じように、B銀行では年収の15倍から20倍が上限であったり、C銀行では、他の借入額は問わずにC銀行のみでの借入枠であったりします。
このように、それぞれ銀行によって属性に対する融資基準が違います。したがって、銀行ごとの融資基準を常に把握して、使う順番や使い方をしっかりと計画するべきです。また、同じ銀行でも時期によって審査基準はどんどん変化していくのにも注意が必要です。 とある銀行が好む属性は、年収1000万円以上の人です。購入予定の物件が1億円以内でも、年収700万円以上は必要になっています。 かつては年収500万〜600万円の人でも、3億円ぐらいまで借りることができましたが、今はかなりハードルが上がっている状態です。
年収1000万円以上の属性があれば、わざわざ金利の高い銀行で借りなくても、メガバンクや地方銀行、信用金庫など10行ぐらいはいけるのではないかと思います。仮に銀行
から厳しい融資条件が出されたとしたら、他の銀行を当たってみればいいだけの話です。 また、年収が1000万円以下でも悲観する必要はありません。一定の条件が整えば、
融資を受けることができる銀行もあります。物件によって使える銀行は複数あり、5000万円以下の新築物件であれば、一部のメガバンクや外資系銀行なども使えます。
このように個人の資産背景、購入予定の物件内容によって使える銀行は変わってくるのです。
信用金庫の場合は、基本的には何かしらの取引実績がないとなかなか取り組みにくい金融機関です。また、取り扱いエリアも狭いため、お住まいのエリアや購入する物件のエリアも限定される場合もあります。最近では、一部の信用金庫が積極的に不動産投資家に融資を行っているので、間口は以前よりも広がっていると思います。例えば、給与の振込口座を信金で開くなどして、あらかじめ取引実績をつくっておくのも有効な策でしょう。
不動産業者の言うことを鵜呑みにしてはいけない
融資を受ける際に気を付けなければいけないのは「不動産業者の言葉」です。
これは融資相談を受けた投資家さんの話です。この方は年収が約1500万円で、既に何棟か持っていました。将来は法人でやっていきたいという希望を持っていたようですが、不動産業者から「まず個人で物件を購入して、実績をつくった後に法人を立ち上げるべき」とアドバイスを受けたそうです。
しかし、この方の最終目標は10億円規模の投資です。この目標と年収、資産背景があれば、私は「最初から法人名義で買った方がいい」と判断しました。
その不動産業者は経験不足で法人融資を扱ったことがないのか、それとも単純に手間と時間がかかり面倒だからなのか理由はわかりません。ただ、不動産業者側からすると、法人ではなく個人名義の方が購入しやすいのは確かです。 例えば、A銀行には個人投資家向けのパッケージ商品があります。住宅ローンと同じような要領で融資審査も早く、非常に使いやすいローンです。これが同じA銀行でも法人名義の場合は事業性融資(プロパー融資)になるので、個人と比べて手続きや審査に時間がかかります。
もちろん、まずは個人で実績を積んでから、法人へ進めるという考え方もありますし、たしかにプロパーでも個人の実績を重視する金融機関はあります。 ただし、最終的には資産と負債のバランスを見ながら融資審査を行います。いくら個人の実績があったとしても、残債が大きければ融資を受けられない可能性もあるわけです。個人・法人どちらの名義で借りるにしても、不動産業者の話だけを鵜呑みにして金融機関を決めないことが大切です。