旅館業の種類は様々
旅館業法において、「旅館業」とは宿泊料又は室料を受け、人を宿泊させる営業のことをいい、「宿泊」とは寝具を使用して旅館業の施設を利用することをいいます。旅館業を経営する場合は、保健所長の許可が必要となり、宿泊料又は室料を受けて人を宿泊させる施設で、反復継続の意思を持ち、且つその行為が社会性を有している場合は、すべて対象となります(会員制や会社の研修施設等特定の人を対象とする宿泊施設も含まれる)。また、旅館業の営業者は、施設を構造設備基準及び衛生管理基準に適合させることが義務付けられています。
ここまでが前提条件となり、旅館業の種類には以下があります。営業種別毎に許可基準が異なっています。
①ホテル営業
10室以上の洋式客室を主体とする宿泊施設での営業。レストランや食堂で食事を提供できる宿泊施設
②旅館営業
5室以上の和式客室を主体とする宿泊施設での営業。
③簡易宿所営業
客室を多数人で共用する宿泊施設での営業。カプセルホテルや民宿、ペンション、キャンプ場のバンガローなどが該当。
④下宿営業
一月以上の期間を単位とする宿泊施設での営業。
ここでは簡易宿所について、より深く掘り下げていきます。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によると、簡易宿所は、宿泊する場所や設備を多数の人が共同で使用する有料の宿泊施設を指すとしています。簡易宿所の具体例としては、民宿・ペンション・山小屋・ユースホステル・カプセルホテルなど他の種別に比べて多様です。簡易宿所が生まれた経緯としては、1960年代を中心とする高度成長期に、建設現場などでの日雇い仕事を求め、都市部へ集まってきた労働者のための宿泊所として急成長したといわれています。
2016年4月には、旅館業法の運用緩和(旅館業法施行令の一部改正、簡易宿所営業における玄関帳場に関する通知の見直し)が実施されました。従来、必要であった帳場(フロント)が不要になるとともに、面積要件も従来は一律で33平米以上の広さが必要であったところ、宿泊客が10人未満の場合に関しては、1人あたり3.3平米以上に緩和されています。しかし、行政による上乗せ条例もあり、そこまで緩和されているといえない現状もあります。この辺は、「簡易宿所の条件」で詳しく解説します。
また、この法改正以前から「農家民宿」に関しては、規制緩和が行われていました。「農家民宿」とは、旅館業法条の「簡易宿所」営業許可を取得するもののうち、農林水産省令で定める役務を提供するものをいいます。2016年4月1日に旅館業法の運用が緩和される以前から、客室延床面積が33㎡未満であっても旅館営業(簡易宿所営業)が認められていました。