日本国内の人口減少や不動産価格の高騰、また日本とは違い、物価や所得が上がっている海外に注目が高まっています。本記事では、海外不動産投資のメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
海外不動産投資とは?
海外不動産投資とは、文字通り海外のマンションやコンドミニアムといった不動産を投資・購入することを指します。日本では考えられない不動産価格の上昇によりキャピタルゲイン(売却益)を得たり、高利回り物件を賃貸として貸し出し安定的・継続的に家賃収入を得たりすることを目的としています。
【海外不動産投資のメリット】
まずはじめに海外不動産投資のメリットをご紹介します。
①キャピタルゲイン(売却益)を狙うことができる
海外には不動産価格が上昇し続けている国があります。そのような国では不動産の売買差益、いわゆる「キャピタルゲイン」の獲得を狙いやすいです。
まさにこのキャピタルゲインの獲得こそが、日本人が海外不動産に投資する最もメジャーな目的でしょう。キャピタルゲインを得るためには、当然ながら購入価格よりも高い金額で売却する必要があります。しかし、日本では人口が減少している上、景気も長らく低迷しており、将来的な不動産価格の大幅な上昇は見込みづらいのが実情です。
②安定した家賃収入を得ることができる
人口が増えている国では空室リスクが少ないため、家賃収入が安定しやすいです。
家賃収入は「賃料×戸数」ですから、安定した家賃収入を得るためには、以下のような地域に投資することが望ましいです。
☆賃貸需要が高く、空室リスクが小さい地域
単純に考えれば、人口が増えている地域は空室リスクが低い地域であるといえます。人口が増加している地域では往々にして住宅の供給が需要に追いついていないため、賃貸需要が高い場合が多いです。そうした観点から、マレーシア、フィリピン、タイなどの東南アジアの途上国は、日本人の不動産投資先として人気が高いです。
☆賃料が下落しにくい地域
安定的に家賃収入を稼ぐためには、高い賃料を維持することも重要です。日本の場合、新築と比較して中古物件の価値が低く評価される傾向が強いため、築年数の経過とともに得られる賃料は下落します。一方で、アメリカやヨーロッパ諸国では、中古物件の価値が日本ほど低く評価されません。そのため、賃料が下落しにくく、安定的に家賃収入を得やすい地域として、不動産投資に人気のエリアとなっています。
③資産の分散によるリスク回避
資産を分散保有することでリスクを低減するというのも、海外不動産投資が注目されている理由の一つです。国内の不動産投資でも、エリアや構造、築年数などが異なる物件に投資してリスク分散を図るのは定石とも言える戦略ですが、さらに海外不動産をポートフォリオに組み込むことで、よりリスクを分散できます。
海外不動産に投資することで分散できるリスクとしては、為替リスクや自然災害リスクが挙げられます。
☆為替リスク
日本に住む方の多くは、現金・預金、株式、債券、不動産などといった資産のほとんどを円建てで保有しているでしょう。円建て資産に偏った資産配分では、将来的に為替レートが円安方向に動いた場合、資産や購買力が低下してしまいます。将来円高になることを確信している場合を除けば、円建て以外にも外貨建て資産を保有することは、合理的なリスク分散と言えます。
☆自然災害リスク
日本で不動産投資をする上で避けられないリスクとして、地震や台風といった自然災害リスクがあります。また、自然災害そのものではありませんが、東日本大震災での原発事故によって、放射能汚染というリスクも浮き彫りになりました。これらの自然災害を未然に防ぐことは不可能ですから、資産を部分的に海外に移してリスク分散を図ることは有効な対策の一つです。
【海外不動産投資のデメリット】
上記では一般的に語られている海外不動産投資のメリットをご紹介しました。しかし、海外不動産投資にはそのようなメリットばかりではなく、大きなリスクも存在します。下記では海外不動産投資のデメリットを紹介します。
①家賃収入が得られないリスク
日本人にとっての海外不動産投資の大きな動機は、国内では期待しにくい家賃収入の獲得にあります。しかし、結論から言えば、家賃収入狙いの投資はおすすめできません。なぜなら、たとえ人口が増加している国であっても、家賃収入を獲得できないリスクが十分にあるからです。
そもそも不動産投資の魅力とは、自分の努力によって結果をある程度コントロールできることにあります。ここでいうコントロール可能な結果とは、インカムゲインの獲得を指します。適切なエリアの物件で適切な取り組みをすれば、ある程度安定的に家賃収入を得る仕組みを作れます。
一方で、キャピタルゲインはコントロールすることが非常に難しいです。経済成長しているから、人口が増加しているからと言って、不動産価格が右肩上がりに上昇するほど単純な話ではありません。不動産バブルの崩壊、リーマンショックやコロナショックのような予測不可能な景気後退によって、不動産価格が下落するリスクは常に存在します。そのようなコントロールが難しく不確実性の高いものに期待して購入する行為は、もはや投資ではなく投機です。以下では、キャピタルゲインを獲得できない3つの代表的なパターンをご紹介します。
☆値上がりしない可能性がある
キャピタルゲイン狙いの不動産投資は、当然ながら不動産価格の上昇に期待しています。その投資先を決定する際の根拠となっているのが、「過去に不動産価格が値上がりをしている地域なら、今後も値上がりするだろう」という推測です。この推測がまったくの見当違いというわけではありません。たしかに、経済発展中で人口が増加している国では、不動産価格が上昇し続ける傾向があります。しかし、絶対に上昇するという保証はありません。
☆売却できない可能性がある
キャピタルゲイン狙いで投資するケースが多い海外不動産ですが、将来的に売却したいタイミングで買い手が見つからないリスクがあります。例えばクアラルンプールのような不動産価格が上昇している地域内でも、物件が供給過剰気味のエリアが存在します。the Valuation and Property Services Department (JPPH)の2018年のマーケットレポート(参考記事:Developers’ group urges Malaysia to open property mart to more foreigners as glut persists)によれば、2018年にマレーシア国内で売れ残った物件は32,313件に及びます。
そのような地域では、物件を売りたくても買い手が見つからない可能性があります。売却できなければキャピタルゲインを獲得することはできません。インカムゲインである程度の投資回収ができているなら良いですが、キャピタルゲインありきの投資計画だった場合には、大変な痛手となります。
☆(プレビルド物件の場合)建物が完成しない可能性がある
プレビルドとは、物件の建築工事に着手する前、あるいは完成前に物件を購入することです。タイやフィリピンなどの東南アジア諸国でのコンドミニアム建設などでは一般的な販売手法であり、日本人の投資先としても人気があります。
プレビルド物件のメリットは、大幅なキャピタルゲインを狙えることです。プレビルド物件は建築着手前の販売価格は安く、完成が近づくにつれて販売価格が上昇していきます。建築の初期段階で安く購入し、完成後に高く売却することでキャピタルゲインを狙います。また、「プログレスペイメント」と呼ばれるように、購入金額を分割して支払うことが一般的であるため、手持ちの資金が少ない場合でも購入しやすいというメリットがあります。しかし、建築工事の着手前に安く購入できるというのは、それなりのリスクを背負っています。プレビルド物件の代表的なリスクとしては、以下のようなものがあります。
- 物件の竣工が大幅に遅れるリスク
- デベロッパーの倒産により、物件自体が完成しないリスク
- 物件が無事に完成したとしても、想定していたほど販売価格が上昇しないリスク
- 売却のタイミングを見誤り、上昇幅の少ない時点で売却してしまうリスク
- 価格の安さで物件を選んだ結果、需要の低いエリア等の物件を購入してしまい、売却できないリスク
特に、建物自体が完成しなかった場合は、購入金額をそのままどぶに捨てるようなものです。常にプロジェクトの進捗状況を確認しておく必要があります。
②海外不動産投資では、融資を受けることが難しい
海外不動産へローンを借りて投資する場合、対応できる金融機関に限りがあります。
また、投資する国によって融資可能な金融機関も限られます。
特に地方銀行や信用金庫は海外不動産投資への融資をしていないケースが多く、メガバンクへ融資を依頼すると審査が激しく認可が得られないことも多いです。
海外不動産投資ローンを専門に行う金融機関もあるが、金利が高いなどのデメリットも上げられるため、利用できる金融機関が少ない点は大きなデメリットでもあります。
③為替変動により損失を被るリスク
先ほど海外不動産投資のメリットとして、外貨建て資産を保有することで為替変動リスクをヘッジできることを説明しました。しかし、為替変動の影響を受けて逆に損失を被ってしまうリスクも十分にあります。
例えば、利回り8%のアメリカ不動産を50万ドル(1ドル=110円)で購入したとします。この時、購入金額を日本円に換算すると5,500万円です。想定していた年間家賃収入は4万ドルで、日本円で50万ドル×8%×110=440万円です
しかし、家賃収入を日本円に両替する時のレートが1ドル=100円だった場合、年間収入は400万円となり、購入時に当時のレートで想定していた440万円よりも40万円も少なくなってしまいます。また、この物件を55万ドルで売却したとします。購入時より10%高い価格で売却していますが、売却時のレートが1ドル=100円だった場合、日本円換算で5,500万円です。5万ドルのキャピタルゲインを、為替変動で丸ごと失ってしまったことになります。
このように海外不動産の為替リスクとは、為替変動によって購入前に想定していたよりも少ないキャピタルゲイン・インカムゲインしか獲得できないリスクです。しかし、先ほどの例とは逆に1ドル=120円になった場合では、想定より大きな利益を獲得することができます。為替変動リスクはプラスにもマイナスにも働くため、一概にデメリットとは言えませんが、大きな金額を投じる不動産投資では、マイナスに働いた場合の損失は非常に大きいです。
④管理に手間がかかる
海外に不動産を所有した場合、その管理は国内不動産よりも手間がかかります。不動産投資は、買って終わりではありません。購入後にきちんと管理し、インカムゲインを稼ぐ必要があります。国内の不動産であれば、自分で定期的に物件を見に行くことも、管理会社と密にコミュニケーションを取ることも可能です。不動産オーナーの中には、管理会社を介さずに自主管理する人もいます。
しかし、海外の不動産となると、そうはいきません。自主管理は基本的に不可能ですので、管理会社に管理を委託することになります。しかし、海外の管理会社の場合、日本の管理会社と比較して対応がずさんなケースが多いです。よくあるトラブルとして、以下のようなケースがあります。
・管理会社の担当者からのメールのレスポンスが遅い
・物件の入居や修繕の状況について報告がない
外国人であることを理由に、対応を後回しにされてしまうケースもあります。そのようなずさんな管理では、安定的にインカムゲインを稼ぐことは難しいでしょう。海外不動産投資を成功させるためには、信頼できる管理会社をパートナーに選ぶことが必須条件ですが、その選定は簡単ではありません。
【まとめ】
この記事では海外不動産投資のメリット・デメリットを紹介しました。
海外の物件は日本より投資額を抑え、高利回りが期待できる一方、現物を見られない方も多く、投資に失敗する可能性もあります。さまざまなリスクがある中で海外不動産投資を成功させるには、信頼できる不動産会社を見つけることが重要です。