「不動産取引と査定方法」
不動産査定と一括りにされがちな評価法ですが、実は物件の個別要素と個別事情によってその査定方法や算出方法は異なります。
宅建業者や金融機関は主に以下の3つの評価法により不動産の評価を行ないます。
①原価法
②取引事例比較法
③収益還元法
基本的に、適正な価格を算出するには1つの方法だけではなく複数の手法を適用すべきとされています。また、複数の手法の適用が困難な場合においては、なるべく手法についての考え方に基づいて算出するよう心がけるように努めなくてはなりません。
①原価法
原価法とは、査定物件の建物を取り壊して、現在の建物と同様の建物を新築した時の価格を計算し、その価格から建物設備が老朽化している分を経過年数に応じて差し引くことで建物評価を算定する評価法です。
原価法は主に一戸建ての評価に使用します。
※建築単価は、国税庁のサイトにある「建物の標準的な建築価格表」(chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2021/pdf/O/O13.pdf) で確認します。
※耐用年数は、国税庁のサイトにある「耐用年数表」(chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf) で確認します。
ただし、自己居住用の耐用年数は、事業用×1.5(所得税法施行令第85条)として計算します。
次に土地評価額に関しては、「路線価」を利用する場合と、「実際の取引事例」をもとに評価する方法があります。
まず最初に路線価による評価を算出し、実際の取引事例により比較検討する方法が理想的です。
※路線価は実勢価格(時価)の80%とします。
②取引事例比較法
取引事例比較法は、査定物件と条件が近い類似物件の成約事例を集め、形状、環境、方位などの個別要素を比較検討し、売却理由など様々な要因を加味して査定価格を比較検討する方法です。
取引事例比較法は主にマンション、土地の評価に使用します。
上記の計算式でいう「補正率」とは、「勝負できる価格」を導き出すことを目的に、100%を基準とした案件ごとの個別要素、個別事情を考慮して掛け率を決定します。
査定者によって計算方法は異なりますが、だいたい補正率はマイナス30%〜プラス20%で調整する場合が多いです。
また、この評価法の1番のポイントは成約事例地の選択にありますが、宅建業者の場合、レインズにおける成約事例をフルに活用します。ただ、レインズを利用する場合でも、条件の類似する成約情報が少なかったり、売り出し開始から成約までの正確な時間が確保できないといった点も考慮したうえで、慎重に価格決定を行ないましょう。
③収益還元法
収益還元法で算出された価格は収益価格と呼ばれ、対象の不動産が将来的にどのくらい稼ぐ力をもっているのかを示すために有効な算出方法であり、不動産投資において最も重要な収益力を表すことができる査定方法です。収益還元法には「直接還元法」と「DCF法」があります。
収益還元法は主に収益物件の評価に使用します。
※1年間の純利益=1年間の総収入-1年間の諸経費(管理費など)
計算式でもわかるように、収益還元法では「収益性」のみ重視しており、不動産の個別要素は全く反映されません。
ですので、査定する際には空室リスクや修繕計画、管理費や修繕積立金改定などの直接その物件の収益性に影響を与える内容には注意が必要です。