★家族信託の活用例★
前号では家族信託の分類に関してご説明させていただきました。
今回は、実際の活用例をいくつかご紹介させていただきます。
ケース1. 父が介護状態(認知症)となった、介護費用はどこから捻出する?
母が3年前に他界し、一人暮らしの父80歳が認知症になった場合、誰が介護をし費用を出すか決まっていない方も多いと思います。
認知症になってしまうとは本人も家族も信じたくも無い事ですが、統計上のお話しをいたしますと65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%となっており、6人に1人程度が認知症有病者という統計が発表されており、増加傾向にあります。家族信託を設計しご家族でしっかりと準備をしておきましょう。
まずは金銭の使い道を整理しましょう。
登場人物の設定 父(委託者・受益者)
母 他界
兄(受託者)
弟
まずは兄弟間で信託する金銭の使い道を明確にします。できるだけ細かく設定いたしましょう!
介護費、医療費、生活費など使用用途を明確に設定し、想定される費用を見積もります。※介護が重くなれば費用も嵩みますので注意は必要です。
次に、受託者(兄)信託口口座を開設し、信託する金額を父から信託契約締結とともに振り込んでもらいます。
信託口口座とは受託者の死亡や破産、差し押さえなどにより口座が凍結されない口座であり、金融機関内部で受託者個人口座と紐づけされていない口座。
信託口口座から設定した費用を捻出することが可能になります。
資産運用時は使用用途を明確にしておきましょう。
受託者(兄)の判断だけで資産を運用・使用している場合、親戚の方に信託財産を私的利用しているなどと疑いをかけられてしまう事があります。
受託者(兄)は使用用途を明確にするため、レシートの保管、記帳記録などを管理し第三者から見ても適切に管理・運用されてる事がわかるようにしておきましょう。
残金をどう分けるかも設定しておきましょう。
父が死亡した時点で信託契約は終了となります。
信託口口座に残ったお金は法定相続人の間で等しく分けるように設定したり、残ったお金の行き先もあらかじめ決めておきましょう。
法定相続人:民法で定められた相続人のことです。相続人には順位があります。
残金の行き先や振り分けた金銭に関して帳簿作成し、無用なトラブルを回避できます。(受託者には帳簿作成義務があります)
ケース2. 所有している収益物件(アパート)高齢になっても維持・管理できるか心配
登場人物の設定 父(委託者・受益者) 区分所有2部屋を所有 将来的には兄、弟にそれぞれ1部屋ずつ分配したい。
母 他界
兄(受託者)
弟(受託者)
今回のケースでは、兄、弟を受託者として設定します。亡くなるまでの受益者は父と設定します。
2名の受託者設定
また、管理だけではなく父が他界した際には受け取ってもらうことも設定しましょう。
兄、弟を受託者として設定し、物件の管理の信託契約を締結します。
認知症や要介護状態になった際に信託契約が有効になり、兄、弟が物件の管理・運営をしてくれます。また、賃料収入から介護費用の捻出でき、子どもたちに負担をかけることが無いように設定しておきましょう。
家族信託契約を通じて子どもたちに管理・運営のノウハウを伝える事ができ、亡くなってから突然相続で物件を任されるよりもお互いに安心ですよね。
信託口口座も2名で設定
今回のケースでは物件を兄、弟が相続した時点で契約終了としますが、上記でご紹介した信託口口座を兄、弟の名義で開設し、現金に関しても取り決めを作成しておくことは重要です。
ケース3. 所有している複数の土地では
上記のように区分所有の2部屋なので信託する内容はわかりやすいですが複数の土地でしたらどうでしょうか?
有効活用できる信託契約を結ぶ
土地を有効活用(開発など)できる信託契約を結んでおきます。
登場人物の設定は上記と同様に考えます。
受託者の権限によってアパートの建設や使用方法の変更、土地の分合筆、金融機関からの借入れる事が可能な契約内容にしておきます。
このように設定しておくと受託者が権限を持ち契約関係の当事者になることが可能になります。また建築中の中途契約に関しても受託者が契約できることとなります。
まとめ:認知症が進行する前に子どもたちに資産の活用のノウハウを受け継げることができるのが家族信託の魅力です。しっかりと設計しましょう。