キャッシュフローから見た出口のタイミング
前回の投稿では不動産投資の目線の中で物件の状況、環境に合わせた出口の考え方や、リスク面についてのお話をさせて頂きました。
今回はキャッシュフローや税金の面から見た出口戦略について書いていきます。
某有名投資家も税を制するものは不動産投資を制すると話しておりました。
分かっているようで、ちゃんとは説明出来ないこの二つについて掘り下げていきます。
譲渡所得税の短期と長期の税率の変わり目
キャッシュフローからみた初めの出口のタイミングは、売却益にかかる譲渡税の税率が切り替わる時期です。
売却益は、売却をした年の1月1日に所有期間5年以下は短期譲渡、5年を超えると長期譲渡所得になります。
投資用不動産は非居住不動産に該当するため、復興特別所得税を含めた所得税と住民税を合わせた税率は、短期譲渡所得は39.63%、長期譲渡所得は20.315%です。
所有期間が5年を超えるかどうかで、税金が倍近く変わるため、大幅な売却益が見込める場合は、所有期間は出口のタイミングを決める判断材料のひとつになります。
ローンの金利変更
不動産投資で利用するローンでは、3~5年程度の短期固定金利、あるいは、変動金利を選ぶのが一般的です。
ローン金利は固定期間が長いほど金利が高くなることに加えて、不動産投資では長期間保有しない可能性もあるため、長期固定金利を選択するのは不利になります。
特に当初の固定期間が終了して金利が切り替わると、金利の上昇によって収益が悪化する場合には、売却することも検討するべきタイミングです。
また、ローンの残債が減っていくにつれて、返済額に占める利息の割合が減っていくため、必要経費に計上できる費用も減少していきます。
税負担が次第にアップすることも踏まえて、売却するか検討していく必要があります。
法定耐用年数は買い主のローンの借りやすさに影響
出口戦略を考えるうえでは、買い主が買いやすい状況で売却することも、不動産投資を成功させる条件のひとつです。
マンションの場合は、一般的にRC造の法定耐用年数を超える期間のローンを組むことは難しいといわれています。
たとえば、築20年物件の場合、27年程度までのローンを組むことができます。一方、木造アパートの場合は、法定耐用年数は22年ですが、新築で30年程度のローンを組めることが一般的です。
しかし、築5年の物件の場合は25年程度のローンが組めても、築10年になると10~15年程度の借入期間になることが多いです。
ローンの借入期間を20年以上とれない場合は、月々の返済の負担が重くなるため、購入できる層が限定されます。
出口が狭められると有利な条件で売却しにくくなりますので、買い主のローンの借りやすさも出口戦略で重視するべきです。
20年以上の借入期間がとれるタイミングで、出口を検討しておきましょう。ただし、金融機関によって融資基準には違いがあり、物件の収益性や買い主の属性によっても異なります。
また、法定耐用年数は買い主側だけに影響するわけではありません。物件のオーナーにとっては、法定耐用年数は減価償却期間に関係します。新築で購入した場合には、「法定耐用年数=減価償却期間」ですので、法定耐用年数を超えると減価償却費の計上が終わる点にも留意するべき点です。
課税所得が大幅に増えて税負担がアップすると、収益の圧迫要因になります。そのため、法定耐用年数を超える前に、出口戦略を考えておくほうが賢明です。
不動産投資目的別出口戦略の考え方
不動産投資は所得税などの節税や相続税対策、資産形成を目的に行われることが多く、出口戦略は目的に応じて考えていくこともできます。不動産投資の目的によって、出口戦略を考えて運用するべき期間に違いがあります。
所得税の節税
日本の所得税は超過累進課税制度がとられているため、所得が増えると高い税率が課せられます。たとえば、900万円を超えて1,800万円以下の所得に対する税率は33%であり、1,800万円を超えて4,000万円以下の部分は40%です。
4,000万円を超えた分の所得にいたっては税率が45%にもなるため、住民税の約10%の税率と合わせると、半額以上が税金で消えることになります。
所得税や住民税の節税目的での不動産投資は、5年以下の短期的な運用が有利です。築古物件へ投資して、短期間で減価償却費を計上する投資手法を選ぶと、効率よく節税が図れます。
減価償却費は、購入費用のうち建物の部分の費用を法定耐用年数にもとづいた減価償却期間に分割して、必要経費として計上できるものです。新築物件の場合は、RC造で47年、軽量鉄骨造で27年、木造で22年という法定耐用年数がそのまま減価償却期間になります。
一方、中古物件の場合の減価償却期間は
「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2」
で算出され、法定耐用年数を超えた物件の場合は、
「法定耐用年数×0.2」
です。たとえば、築25年のマンション場合、
「(47-25)+25×0.2=27」
のため、減価償却期間は27年です。
同じ価格の物件を購入した場合、短期間で減価償却できるほうが、1年あたりの節税効果が大きくなります。
特に法定耐用年数を超えている木造アパートの場合、4年で減価償却ができるため、節税効果が高いです。減価償却できる期間が終わると、経費計上できる必要経費が大幅に減るため、減価償却費が計上できなくなるタイミングで売却を進める必要があります。
ただし、出口戦略を考えると、法定耐用年数までの期間が短い物件は、買い主がローンを組みにくいことがネックになります。しかし、融資の条件は物件の収益性にもよるため、法定耐用年数までの期間が短い築古物件への投資では、立地条件を重視し、土地の価格が高い物件など、流動性の高い物件を選ぶことが大切です。
相続税対策
不動産投資が相続税対策になる理由は、評価額の算出方法の違いによるものです。
現金や株式などの有価証券は相続税上、時価で評価されます。
しかし、不動産の場合は、土地は時価の8割程度の評価となり、建物は工事費用の5~6割程度になります。
さらに、第三者に貸すことでさらに評価減を受けられるため、相続税対策で賃貸経営が行われることが多いのです。これは、固定資産の評価が「自分で使用できる資産」を軸に考えられたものであるからです。他者に貸しているということは、自分で自由に使い道を変更することが難しくなる=自分の権利が弱いというとらえ方です。
相続税対策での不動産投資は、3~10年程度の短期から中期で出口戦略を考えていくのが基本です。
年齢や健康状態によっては、長期運用も考えられますが、税制改正や市況の変化に対応できるように、投資物件を見直すことも必要になります。
また、相続が発生した後に、すぐに売却して現金化を図ることもあるため、相続人のことを考えると、売りやすい物件を所有しておくことが望ましいです。
ただし、あからさまに相続対策で不動産の売買を短期間に行った場合には国税庁から指摘を受ける恐れがあります。(問題となったのは年始めに購入し、相続後年内に売却したパターン)
これを回避するために、相続後少なくとも1年以上は保有し続けたほうが無難といえます。そうすると次は「相続税を払う現金が無い」という問題にぶつかります・・・。
でも売ると脱税を疑われて追徴課税されるかも・・・。
つまり、事前に相続前後で「不動産にするお金」と「現金のままのお金」を分けて置き、相続した現金で相続税の支払いが済むように調整しておくことが重要です。
被相続人がアパートやマンションを一棟所有していた場合、遺言がないケースでは、売却しなければ分割できませんが、売却には相続人全員の同意が必要です。一方、複数の相続人で賃貸経営を行うケースでは、意思決定に時間がかかるため、運用に支障をきたすこともあります。
まとめ
分かっている様で、なかなか理解までするのは難しい所ですよね。
まずは、税については全体像を把握する事が大切になります。
最終的には税理士の先生や、不動産投資顧問にも相談しながら進めていく事で、自身の知識となっていきます。
今回のブログで何かヒントになるようなポイントがあれば幸いです。
難しい部分ですので、大事な部分ですのでしっかり知識をつけていきましょう。
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