【IRRとは】
IRR(Internal Rate of Return)とは内部収益率を意味し、投資対象における収益性の高さを表す指標です。ある投資案件の投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、初期投資額の現在価値が等しくなるときの割引率のことです。もう少し簡単に説明すると投資にかけた資金に対して、その投資によって得られる現在価値の合計がどの程度の割引率で有利になるかを表した数値です。この割引率が高い場合、投資元本に対する収益率が高いことを示し、早期に利益を獲得できることになります。そのため、投資家が投資案件を選ぶ際には非常に重要な指標となります。
【IRRの計算方法】
IRRを計算するには、以下の手順が必要です。
- 投資期間中に発生するキャッシュフローを推定する
- 投資期間中に発生するキャッシュフローを現在価値に直す
- IRRを計算する
ここでいう現在価値とは、お金における時間的価値を考慮し、現在の時間軸で換算した価値のことを指します。例を用いて説明します。
今もらえる100万円と10年後にもらえる100万円では価値が異なります。なぜでしょうか。それは、今もらえる100万円を投資として運用すれば将来的に100万円以上の価値に上げることができるからです。100万円を年利3%で運用すれば、10年後には約134万4,000円になります。つまり、年利3%で運用した場合、今もらえる100万円と10年後にもらえる134万4,000円は同じ価値になります。
以上から投資家は、将来得られるお金は現在価値に直して評価する必要があります。
この考え方を基に、5年後・10年後といった中での時間的価値を考慮し、現在価値に直す必要があります。
IRRは、以下の通りで計算されます。
「現在価値×(1+r)∧n=将来価値」
*r:年利 n:年数 ∧:累乗
先ほどの例を挙げると、100万円を年利3%で運用した場合、10年後には
100万円×(1+0.03)∧10≒134万4,000円となります。∧は累乗を表し、同じ数を何回か掛け算します。年利の計算で累乗を用いる理由は、
年利には複利(利子にも利子がつく)があるからです。
上記の計算をもとに、将来価値から現在価値を求めます。
「現在価値=将来価値/(1+r)∧n」
*r:割引率 n:年数 ∧:累乗
この計算式における「r」のことを割引率と呼び、将来価値を現在価値に換算するための利率として用いられます。
【IRRのメリット・デメリット】
IRRには、以下のようなメリットがあります。
- 投資先の魅力を比較することができる
→IRRは、どのような金融商品や投資期間が異なる投資先を比較するための指標として有用です。IRRが高いほどリターンが大きくなるため、投資家はIRRを参考に、どの投資先に
投資するかを決定できます。
- 投資先のリスクを評価することができる
→IRRは、投資先のリターンだけでなく、投資先のリスクも考慮した指標です。
- 投資先の一定期間の収益性を評価することができる
→IRRは、投資期間中に回収される現在の価値の合計が、投資元本に対する収益率と同等になる割引率を示すため、投資先の一定期間内の全体の収益性を評価することができます。
一方、IRRには投資規模を考慮できないというデメリットもあります。IRRは投資期間全体の収益率に特化しているため、収益額は除外視されてしまいます。IRRを用いて計算する際に
収益率の高い物件を選んでも、収益額は想定よりも下回ってしまうケースもあります。
【まとめ】
ここまで、
・IRRの概要
・IRRの計算方法
・IRRのメリット・デメリット
についてお話してきました。IRRは収益性の高さを示す数値であるため、IRRが高いほど収益性が高いと判断されます。しかし、不動産投資では老朽化等に伴う大規模修繕、入居者の突然の退去など、想定外の事態が起こる可能性も十分にあります。IRRは、異なる投資対象や異なる期間の投資対象の収益性を比較する際に非常に役立つ指標ではありますが、IRRが高い投資が必ずしも良い投資であるとは限りません。IRRのみを重視して投資先を選ぶのではなく、他の指標と組み合わせて総合的な判断のもとで適切な投資先を選択しましょう。